作品解説

「映画」おだやかな革命|辻さんコメント

Story

原発事故後に福島県の酒蔵の当主が立ち上げた会津電力。放射能汚染によって居住制限区域となった飯館村で畜産農家が立ち上げた飯館電力。岐阜県郡上市の石徹白、集落存続のために100世帯全戸が出資をした小水力発電。さらに首都圏の消費者と地方の農家、食品加工業者が連携して進めている秋田県にかほ市の市民風車。自主自立を目指し、森林資源を生かしたビジネスを立ち上げる岡山県西栗倉村の取り組み、都市生活者、地方への移住者、被災者、それぞれのエネルギー自治を目指すことで、お金やモノだけでない、生きがい、喜びに満ちた暮らしの風景が生まれている。成長・拡大を求め続けてきた現代社会が見失った、これからの時代の「豊かさ」を静かに問いかける物語。

〜 日本のローカルで始まっている「おだやかな革命」〜

日本地図

秋田

日本海からの強い風をうける、秋田県にかほ市には、風変わりな風車がある。その名は「夢風」。首都圏にある生活クラブ生協が立ち上げた風車で、風車の売電収益の一部は、地域の特産品の開発に充てられ、風車を縁にして交流が深まっている。にかほ市にある伊藤製麺所は小さな工場だが、代表の伊藤実さんは、生活クラブとの共同開発の中で、消費者と一緒に製品を作り上げる喜び、そして多くの方に購入してもらうことのやりがいを感じている。そして、その取り組みがはじまったきっかけの一つ、風車「夢風」を通して、これまで気づかなかった自然の豊かさの恩恵への感謝の念が、日に日に大きくなっている。

福島

2011年の3月11日に起きた福島第一原発事故の影響で、放射能汚染により全村避難を余儀なくされた飯館村。手間暇を惜しまない、畜産と稲作による循環農法による豊かな暮らし。その暮らしが一瞬にして奪われてしまった。そんな震災の経験を機に、福島県喜多方市にある大和川酒造の佐藤彌右衛門さんは、仲間と一緒に会津電力株式会社を設立した。地下水が豊富な喜多方に続く酒造りが、放射能汚染によって壊滅することのないよう、地域の人による出資でエネルギー事業を手掛け、売電した収益は出資者である地域の人々に還元されていく仕組みを生み出す。そんな佐藤さんに後押しをされた形で始まったのが飯館電力。代表取締役に就任したのは、畜産農家の小林稔さん。全くの異業種への戸惑いながら、佐藤さんの強力なサポートによって、事業は展開してくことになる。ソーラーシェアリングという現代的な手法を通して、売電もしながら、農地を守っていくことを決心した。

岐阜

岐阜県郡上市にある小さな集落、石徹白。ここには約100世帯、人口270人ほどの人々が暮らしている。村に唯一ある小学校の存続が危ぶまれる中、この地域が変わるきっかけを作った移住者がいる。平野彰秀さんと、平野馨生里さん夫婦だ。東京で外資系のコンサルティング会社を経て移住して来た平野さんが目指しているのは、持続可能な地域の暮らし。地域に暮らす人々と一緒に、小水力発電事業をいくつも実現してきた平野さん。その結果、地域を訪れる人が増え、少しずつ地域での仕事が生まれ、移住者が増えていくことに。さらに、馨生里さんは、石徹白に伝わる伝統的な野良着などの服飾文化を生かして「石徹白洋品店」を開設。エネルギー事業だけでなく、地域の伝統的な文化や暮らしも再生していくことを目指し、集落で活動を続けている。

岡山

岡山県西粟倉村。人口1500人ほどの小さな村。この村は平成の大合併をせず、地域の森を再生することで、村の生き残りをかけることになった。森から出る6割の木材は、市場に流通すると赤字になることから、そこに目をつけて起業した村楽エナジーの井筒耕平さんは、地域の温泉施設や自らが運営するゲストハウスに、薪ボイラーを導入。それまで重油に1000万円かかっていた施設に村の木材が燃料として使われることになり、地域資源を有効活用するだけでなく、地域経済の活性につながった。この村ではヒノキを使った家具職人や、楽器製作者など様々な職能の持ち主が起業する姿がある。村をあげて、起業家を育てるローカルベンチャースクールも開講されている。人も森も丁寧に育むことを惜しまない村づくりに共感して、本当の豊かさに気づいた人々が年々移住している。